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裁量労働制(みなし労働時間制)とは?|導入のメリット・デメリット、対象職種などを解説

待遇・制度

中小企業の人材採用が困難を極める中、様々な働き方のニーズに応えられる多様な勤務スタイルの導入が採用活動を有利に進めるひとつの鍵となっています。

今回ご紹介する「裁量労働制(みなし労働制)」は、自社の人材採用を改善しながら、同時に、従業員の生産性を高めることにつながる勤務制度です。

しかし、すべての職種で裁量労働制が適用できないなどの注意点もあります。

本記事では、裁量労働制の対象となる職種やメリット・デメリット、他制度との違いなどをわかりやすく解説していきます。

この記事を書いた人
(株)アルフォース・ワン 代表取締役
山根 謙生(やまね けんしょう)
従業員50名以下の中小企業に特化&全国100種類以上の求人広告を取り扱う採用支援会社 (株)アルフォース・ワン 代表。地域の小さなお店から上場企業まで、日本全国で「300社・5,000件」以上の採用支援実績あり。求人・HR業界歴13年目に突入。

裁量労働制とは?

裁量労働制とは「みなし労働時間制」のひとつで、実際の労働時間に関係なく、あらかじめ企業と労働者間で契約した時間で働いたものとみなして賃金を支払う制度です

例えば、1日の労働時間を8時間と定めた場合、実際の労働時間が1時間でも10時間でも8時間分の賃金が発生します。

従来のような勤務時間による制限がなくなるため、個人の裁量で勤務時間を管理でき、時間ではなく「成果」に重点をおいた働き方と言えます。

裁量労働制の目的

裁量労働制の主な目的は、時間に制限されない働き方による生産性向上です。現在の労働基準法では、労働時間は原則「1日8時間、週40時間」となっており、各社では始業・終業時間が定まっていることが多いでしょう。しかし、研究・開発やITエンジニアなど一部の専門性の高い職種では、決められた勤務時間の中では仕事の効率が悪くなる場合もあります。そのような職種においては、労働時間の管理を労働者自身の裁量に任せ、自由度の高い労働環境にすることで生産性が高まることが期待できます

裁量労働制のメリットは?

裁量労働制を導入するにあたって、企業側・従業員側の双方に以下のようなメリットがあります。

企業側のメリット

人材の採用・定着に効果的

裁量労働制のような時間にしばられない柔軟な働き方を導入することで、これまでの採用枠よりも幅広い求職者を採用候補にできることから、よく多くの優秀な人材を獲得しやすくなります

また、既存従業員の満足度も向上するため、離職率が下がり定着率が改善することも期待できます

実際に、2021年12月に発表された厚生労働省による調査結果でも、裁量労働制が適用された労働者の「70~80%」は高い満足度であることが分かっています。

生産性および業績の向上

今までと人件費は大きく変わらず、従業員の一人一人の生産性が向上することから企業の業績UPが期待できます。

また、深夜労働・休日出勤を除いた時間外手当が発生しないため、人件費の予測が簡単になり、労務管理の負担も軽減することができます。

従業員側のメリット

ストレスが軽減される

始業・終業などの勤務時間を含め、自身の仕事における裁量が大幅に広くなるため、マイペースな働き方ができるようになることから精神的なストレスが軽減されることが期待できます。

勤務時間を短縮できる

自身の仕事が早めに終わってしまえば、早めに退勤したり、極端に言えば休日にすることも可能です。

生活スタイルに合わせて、家庭・プライベート・副業など自由度の高い働き方を実現できるのが最大のメリットと言えます。

裁量労働制のデメリットは?

裁量労働制には大きなメリットがあることが分かりましたが、逆にデメリットとなる部分もあります。

企業側のデメリット

制度の導入・整備の負担が大きい

裁量労働制を導入するためには、以下のような煩雑な手続きが必要となるだけでなく、就業規則の変更や、従業員に対する周知・理解のための説明会を設けたりと、企業側にかかる負担が大きいことがデメリットとして挙げられます。

専門業務型 企画業務型

労使協定において、以下の事項を定め労基署へ届出。

・その事業場で対象とする業務
・みなし労働時間
・対象労働者の健康
・福祉確保措置
・対象労働者の苦情処理措置等

*「労使協定」とは…使用者と、過半数労働組合又は過半数代表者との協定

労使委員会において、以下の事項を決議(4/5以上の多数決)し労基署へ届出。

・その事業場で対象とする業務
・対象労働者の範囲
・みなし労働時間
・対象労働者の健康
・福祉確保措置(6ヶ月に1回労基署に定期報告)
・対象労働者の苦情処理措置
・本人同意を得ること及び不同意の労働者に対する不利益取扱いの禁止等

*「労使委員会」とは…賃金、労働時間等の労働条件に関する事項を調査審議し、事業主に意見を述べることを目的とする委員会。使用者及び労働者を代表する者で構成され、労働者代表委員は半数を占めていなければならない。

従業員側のデメリット

逆に長時間労働になるケースも

勤務時間の制限や管理がないことにより、逆に長時間労働になってしまうケースもあります。

また、裁量労働制は、深夜労働・休日出勤を除いた残業代も発生しないため、仕事の裁量が大きい分、自分自身でメリハリをつけた自己管理を行う必要があるでしょう。

裁量労働制の対象職種

前述の通り、裁量労働制はすべての業務・職種で適用できる訳ではありません。

裁量労働制が適用できる業務の条件は

・業務遂行の手段や方法、時間配分等を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある業務

と規定されており、「専門業務型」と「企画業務型」の2種類に分けられています。

専門業務型裁量労働制

専門業務裁量労働制が適用できるのは、「業務遂行の手段や方法、時間配分等を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある業務」とされており、具体的には以下の19業務が対象となっています。

新商品・新技術の研究開発
情報処理システムの分析・設計
新聞・出版や放送番組の制作取材・編集
デザイナー(ファッション/インダストリアル/グラフィック)
放送番組、映画などのプロデューサー、ディレクター
コピーライター
システムコンサルタント
インテリアコーディネーター
ゲームソフト作成者
証券アナリスト
金融商品開発者
大学研究者、大学教授
公認会計士
弁護士
建築士
不動産鑑定士
弁理士
税理士
中小企業診断士

企画業務型裁量労働制

企画業務裁量労働制の対象となるのは、「事業運営上の重要な決定が行われる企業の本社などにおいて企画、立案、調査および分析を行う労働者」とされており、以下の4つすべてに該当している必要があります。

  • 事業の運営に関する業務
  • 企画、立案、調査、分析の業務
  • 業務遂行を労働者の裁量に任せる必要があると客観的に判断される業務
  • 業務をいつどのように行うか使用者が具体的な指示をしない業務

具体的には、以下のような業務が対象となり得ます。

経営企画を担当する部署における業務のうち、経営状態・経営環境などについて調査および分析を行い、経営に関する計画を策定する業務
経営企画を担当する部署における業務のうち、現行の社内組織の問題点やその在り方などについて調査および分析を行い、新たな社内組織を編成する業務
人事・労務を担当する部署における業務のうち、現行の人事制度の問題点やその在り方等について調査および分析を行い、新たな人事制度を策定する業務
人事・労務を担当する部署における業務のうち、業務の内容やその遂行のために必要とされる能力等について調査及び分析を行い、社員の教育・研修計画を策定する業務
財務・経理を担当する部署における業務のうち、財務状態等について調査および分析を行い、財務に関する計画を策定する業務
広報を担当する部署における業務のうち、効果的な広報手法等について調査および分析を行い、広報を企画・立案する業務
営業に関する企画を担当する部署における業務のうち、営業成績や営業活動上の問題点などについて調査および分析を行い、企業全体の営業方針や取り扱う商品ごとの全社的な営業に関する計画を策定する業務
生産に関する企画を担当する部署における業務のうち、生産効率や原材料等に係る市場の動向等について調査および分析を行い、原材料などの調達計画も含め全社的な生産計画を策定する業務

また、企画業務裁量労働制では対象となる事業所も規定されているため注意が必要です。

対象となる事業所は以下の通りです。

  • 本社・本店である事業場
  • 事業の運営に大きな影響を及ぼす決定が行われる事業場
  • 独自に事業の運営に影響を及ぼす事業計画や営業計画の決定を行う支社・支店等

裁量労働制でも割増賃金が発生するケース

前述の通り、裁量労働制では事前に「みなし労働時間」が決まっているため、基本的には残業代が発生しません。

しかし一部例外としては、以下のような場合には残業代や各種手当が発生するため注意しましょう。

法定労働時間を
超える場合
事前に定めた「みなし労働時間」が法定労働時間の8時間を超える場合、8時間を超えた時間数は残業代が発生します。例えば、みなし労働時間を10時間で契約した場合、2時間分の残業手当を加算する必要があります。
深夜労働 裁量労働制であっても、午後22時~午前5時までの時間帯に労働が発生した場合には深夜割増の手当を支払う必要があります。
休日労働 裁量労働制であっても、法定休日(4週間のうちに4日以上、または1週間のうちに1日以上)に出勤が発生した場合には休日出勤に対する手当を支払う必要があります。
36(サブロク)協定 36協定とは、労働基準法第36条に定められた労使協定のことです。裁量労働制において、法定労働時間を超える「みなし労働時間」を定める場合、あらかじめ労働者代表と36協定を締結し、労働基準監督署へ届け出を行う必要があります。裁量労働制においても、36協定の上限時間(月45時間・年360時間)は適用されます。※特別条項付きを除く

裁量労働制と他制度との違い

裁量労働制は、他の勤務制度と混同されることも多いです。

正しく制度を活用するために、他制度の内容や裁量労働制との違いも知っておきましょう。

フレックスタイム制

フレックスタイム制とは、決められた範囲内での労働時間を労働者が自ら決めることができる制度です。

例えば、1ヵ月の労働時間が160時間と定められている場合、ある1日の労働時間が1時間でも10時間でも、最終的に160時間以上の勤務となれば問題ありません。

勤務必須な時間帯として「コアタイム」を設定することが一般的ですが、このコアタイムを設けず、さらに自由な時間で働くことができる制度を「フルフレックス制」「スーパーフレックス制」と呼ばれています。

変形労働時間制

変形労働制とは、労働時間を1日単位ではなく「週・月・年単位」で計算する制度のことを指します。

通常では、1日8時間の法定労働時間を超えた場合には直ちに時間外労働(残業)となりますが、変形労働時間制を導入し、一定期間内(週・月・年)での合計勤務時間を法定労働時間内に収めることで残業代を抑制することができるため、月間・年間のうちに繁閑期があるような業種・職種で活用されています。

事業場外みなし労働時間制

事業場外みなし労働時間制は、外回りや出張が多いなど、会社(事業所)の外で行う業務で会社側が労働者の実労働時間を正確に把握することが難しい場合、所定労働時間を労働したとみなす制度です。

事業場外みなし労働時間制を導入するには、以下の2つの要件を満たす必要があります。

  • 労働者が全部または一部の労働時間について事業外で業務に従事していること
  • 労働時間の算定が難しいこと

会社や事業所の外で行う業務であったとしても、労働時間の把握・算定が難しいとまでは言えない場合には同制度を適用できないこともあり、厚生労働省は「適用できないケース」として次のような例を挙げています。

①複数名で事業場外労働をする際、その中に労働時間を管理する監督者が含まれている場合
②事業場外労働であっても、携帯電話等によって随時使用者が指示を出しており業務進捗を把握できる場合
③事業場で、事業場外労働当日の行先や帰社時刻等の具体的な指示をして労働者がその指示内容に沿って業務に従事し、事業場に戻ってくる場合

※様々なITツールの登場によって、会社(事業所)の外であっても労働時間の管理が可能なケースも多いため、現代の労働環境においては、同制度はそぐわない制度となりつつあります。

高度プロフェッショナル制度

高度プロフェッショナル制度(別名:ホワイトカラーエグゼンプション)とは、⾼度の専門的知識等を有し、職務の範囲が明確で、⼀定の年収要件(年収1,075万円以上)を満たす労働者を対象として、労働基準法で定められた労働時間・休憩・休日などの一部規定を適用しない制度のことです。

  • 高度で専門的な知識・技術を要すること
  • 業務に従事した時間と成果との関連性が高くないこと

を前提条件として、ファンドマネージャーやトレーダー、ディーラー、証券アナリスト、コンサルタント、研究開発業務の5つの対象業務が指定されています。

詳しくは、厚生労働省発行の「高度プロフェッショナル制度 わかりやすい解説」をご参照ください。

まとめ

裁量労働制(みなし労働時間制)は、ルールを守って正しく導入・活用することで、い層から人材が獲得できるようになるだけでなく、従業員の生産性および業績全体の向上も期待できる労働制度です。

制度の詳細とメリット・デメリットをしっかりと把握し、もし導入することで自社のプラスになりそうなのであれば、社労士先生などの専門家にも相談の上、導入に向けて手続きを進めてみてはいかがでしょうか?

また、本記事で紹介した労働制度をこれから取り入れる企業も、すでに取り入れている企業も、求人広告を掲載する際には、就業条件についての法的に正しい表記を守りながら、自社を魅力的に表現する求人原稿の制作が重要です。

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